心理職ユニオンとは
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私たちは、臨床心理士・公認心理師のための心理職ユニオンです。「ユニオン」といわれても「自分とはあまり関係がない」「何をしているのかわからない」など、なじみのない心理職の方がほとんどだと思います。
ここで、私たち心理職ユニオンについてご紹介します。
臨床心理士・公認心理師の方のなかには、大学院を修了し資格が無い状態でキャリアを開始された方が多くいらっしゃると思います。そのため、心理職にとって非常勤であることは珍しくもなく、不安定な身分であり雇用条件や待遇が恵まれていないことが当然のように感じている方も多いのではないでしょうか。「不安定で薄給なことは知りながら自分が心理職を選んだから、この状況は仕方がない」と自己責任論や自虐ともいえる受け取り方をしている心理職の方もいらっしゃるように思います。
資格職である以上、臨床技術向上のための自己研鑽は欠かせません。職能団体は研修機会を提供し、社会の中で心理臨床が浸透するべく組織として活動しています。しかし、これまでの活動で圧倒的に欠けている点があります。それは臨床心理士・公認心理師を、生活を維持している労働者として認識し、その雇用条件や賃金、労働環境などを改善する具体的な取り組みです。
心理職の待遇は非常に不安定です。低賃金で、非常勤であることが多く、収入が安定しないといった状況は、経済的に大きな不安を生み、心理職として働く人々のメンタルヘルスにも影響を与える問題です。他にも、雇止めに怯えたり、社会保障の無さ、持ち帰り仕事の多さなど、私たちが抱える問題は多岐にわたります。
しかし、心理職がどれだけ待遇が悪く不安定な仕事であっても、私たちはこの仕事を続けてきました。世の中には数えきれないほどの仕事がありますが、心理の仕事は、大学・大学院で学び、臨床経験を積み重ねることで得られた専門性を提供することで、支援を要する方々の力になることができる、重要でやりがいのある仕事だからです。
心理職に従事する方々は、この職に従事することを通して、自身の無力さや非力さに向き合い、打ちひしがれることもあると思います。しかしそれらの体験も含め、この職に従事することでしか得られない職業的な充実を確かに感じ、より熟練した心理サービスを提供すべく研鑽を積むことを自らに課して生きている方がほとんどではないかと思います。
心理支援は責任が重く重要な業務です。軽い気持ちで請け負えるものではありません。それにも関わらず私たちは「いつ雇止めになるかもわからなくて不安だ」とか、「病気になったら仕事を失う」といった不安を甘んじて受け入れていて、良いのでしょうか?「非常勤だから仕方ない」「まだ社会に浸透していない資格だから雇ってもらえるだけありがたい」と現状を受け入れ放置していては、心理職が日本社会で専門職として根付き発展していくことは難しいのではないでしょうか。
なぜ、私たちがユニオン(労働組合)を立ち上げたのか。
それは、これらの問題に個人で取り組むことに限界があるからです。我々の現在の雇用や立場を守ることと同時に問題点について雇用主と交渉するのは、職場での自身の立場を危うくするなどのリスクを孕む上、精神的な負担も強く、個人で対応するのは極めて困難だと思われます。
私たちは最終的には心理職全般の待遇改善を目指しています。そのためには、業界団体や国に対して要請をする必要があります。社会的地位向上や業界全体の待遇改善などの問題に取り組むにはユニオンの力が必要です。
〇ユニオン(労働組合)にできること
法的側面からの支援:心理職に限らず、働く上での法律的ルールが守られていない職場は非常に多いです。働き方に疑問をもった時のためにユニオンでは労働相談を行っており、法律的アドバイスができます。また、私たちは違法な働かせ方を規制するために、労働基準法や労働契約法などの労働法を使い、改善を求めていくことができます。
心理職は労働に関する法律に疎いことが多いため、法的側面からの支援を受けられることは、大きなメリットです
雇用主との話し合い:労働組合は、憲法で「団体交渉権」を保障されています。「団体交渉」とは雇用主と労働組合・当該労働者との間で持たれる話し合いの場です。労働組合がこの団体交渉を雇用主に申し入れると、雇用主は基本的には拒否できません。多くの雇用主は労働者個人からの要求や訴えについては聞き入れてくれませんが、団体交渉権を使うことで、雇用主は労働者の訴えに対して誠実な対応をせざるを得ません。心理職ユニオンはこの団体交渉権を活用し、多くの問題を解決しています。
社会的行動:労働組合は、当事者団体として心理職の働き方の実態や問題について告発することができます。また、雇用主や自治体に問題解決に向けた要請や申し入れを行うことで、さまざまな制度の改善や創設を求めていくことができ、労働組合の法律的権利を活用すれば、問題解決に向けた直接の話し合いの場を持つことができます。さらに、これらの社会的行動についてネットやメディアへの様々な発信を行うことで、心理職の労働問題の解決に取り組み、ひいては専門職としての社会的地位向上に取り組みます。
また、私たちが心理職のためのユニオンとして立ち上げた背景に、私たちの働き方と職能の独自性があります。
一人でも入れる:ユニオンというと、職場にある労働組合に入るイメージが強いかもしれません。そのため、非常勤であることが多い私たちにはますます縁遠いものになってしまいます。心理職ユニオンは雇用されている組織や雇用形態に関わらず、一人でも加入できるユニオンです。
どのような雇用形態でも安定して働けることを目指す:心理職は常勤や非常勤など様々な働き方があります。雇用の安定というと一般的には常勤化を目指すことが多いのですが、心理職は非常勤のメリットも経験しています(領域横断的な働き方、ライフスタイルに合わせた勤務、など)。そのため私たちは常勤化だけではなく、非常勤でも安定して働けることを目指します。
心理職の労働者としての自覚と意識改革:連携や協働は心理職にとって重要なキーワードです。しかし周囲のスタッフや上司とうまくやっていかなければならないというプレッシャーは、逆に理不尽な対応やハラスメントを受けても声を上げにくく、実情を見えにくくしています。労働に関する正しい知識を身に着け、「自身が労働者として守られるべきである」という意識を持つ必要があります。社会に訴えるだけではなく、何より私たちの意識改革が必要です。
私たちは2020年に活動を始めました。きっかけは、普段の勤務の中で感じる不安や疑問を、心理職の仲間同士で相談したことです(コラム参照)。そこからユニオンの専門家に相談し、問題の解決に至ったことをきっかけに、ユニオンを立ち上げました。私たちのこの活動が心理職の待遇改善につながり、社会の中で心理職が専門職として位置付けられていくこと、そして質の良い心理サービスを安定して社会に提供できるようになれば、と思っています。
今このページを見て下さっている方は、何かしら雇用について疑問や問題を抱えていらっしゃるかもしれません。まず、私たちの活動や理念に関心をお寄せいただけますと、とてもうれしいです。