ユニオンが2021年9月1日から10月31日にかけて実施した“東京都スクールカウンセラー労働実態調査”。
その中に、
「雇用契約が意に反して更新されなくなる可能性について」という質問項目がありました。
この項目への回答は「不安に感じる」が69%、「やや不安に感じる」が22%。
69+22=91
91%の不安っ!!
高い!高すぎると思います。
「来年もこの仕事続けたいけど、続けられないかもしれない」という、安心感のない
環境のなかで、対人支援を行うのって、メンタルヘルス上あまりよくない気がいたします・・・。
かといって、公立学校のスクールカウンセラーの仕事は、ほかの職場にはないやりがいがあるのも事実。だから、多くのスクールカウンセラーの皆様が不安を抱えながらも仕事を続けてきたし、続けていきたいと思う仕事の一つであるとも思います。
しかしながら、令和6年度の東京都公立学校スクールカウンセラーの採用において、継続を希望していた方々の中に、「不合格」または「補欠」という通知が届いた方が沢山いらっしゃるようです。
2024年1月22日に都SCの合否通知が届いてから、心理職ユニオンはいままでに経験したことのない数の相談をお受けしています。
ご連絡いただいた方のほとんどが、長く都のSCとして勤務しており、学校との関係も良く、勤務の評価も良い(管理職に確認済)方です。また、採用面接でも質問に適切にこたえることはできたと思っていた。それなのに、不合格(補欠)だった、ということです。
2021年に実施したアンケートに回答していただいた91%という高い不安の値は、起きる可能性の少ないことを気に病んでいるような杞憂ではなかったのです。多くの都SCの方々が十分に現実に起きうる危険を感じとっていたのでしょうし、その感覚は悲しいかな正しかった、ということだと思います。
今回、ユニオンにご相談いただいたケースだけでなく、SNS上でも思わぬ結果にショックを受けている方々の声が上がっているのを見て、
「そのときが、来てしまった」
そう思いました。
これでいいのでしょうか?
今回、合格しなかった方の中には学校からの評価が高いSCも多いため、困惑しているのはSCだけでなく、学校側の管理職や教員の方々も頼りにしているSCが次年度勤務できなくなることに憤慨したり、困惑したりしている、という情報が多く寄せられています。
管理職や教員の方々を困らせるのも問題だと思いますが、何よりも、重大で深刻なのは、その学校に通う児童生徒や保護者への支援が途切れてしまうことではないでしょうか。
都教委がどのような基準に基づいて採用を行ったのかはわかりません。ですが、
子供が、
保護者が、
教員が求めるSCを
学校から奪うのは、
いったい誰のため、何のためなのでしょうか。
このような、不透明で理不尽ともいえる選考を行う使用者の下で働きながら、子供や保護者、教員の相談を受けることはかなりストレスフルな状況だと思います。
自分自身の安全安心が脅かされているのに、悩みや不安を丁寧に聴いて、できるだけ安心してもらえる存在であろうとすることの苦しさ。
それを私たちは「仕事があるだけありがたいんだ。だから自分の身のことなど考えてはいけないんだ」と受け入れるしかないのでしょうか。
「誰一人取り残さず、すべての子供が将来への希望を持って、自ら伸び、育つ教育」
東京都教育委員会は東京都の目指す教育としてこのような文言を揚げています。
「誰一人取り残さず、すべての子供が将来への希望を持って」と謳いながら、教育に携わる非正規の職員から仕事を奪い、生活の基盤や職業への誇り、尊厳を踏みにじっても良いのでしょうか。
美しい目標を揚げたところで、その子どもたちが大人になって、例えば都の公立学校でスクールカウンセラーになりたいと希望を抱いたとして、そこには、正規と非正規職員の待遇格差が存在し、専門職が専門性を発揮しにくい雇用不安を感じており、実際に、その不安が現実になり、ある時、突然職を失うことがあることを知ったら・・・
希望が絶望に変わってしまうかもしれません。
私たちユニオンは、現在心理職に従事している方々のためだけでなく、この先、心理の仕事に就きたい、心理の専門家として社会に貢献して生きていきたいと願う子どもたちや、学生の方々のためにも、今回の都教委の雇止め事案を問題視し、団体交渉などを通して改善を求めていきます。
その一環として2月2日、オンライン記者会見を行います。
現場の心理職もその場に出席し、発言します。
私たちユニオンの活動は、始まってから現在にいたるまで試行錯誤、暗中模索しながら続いています。
心理職にありがちですが、私たちユニオンのメンバーも、決して人前では話をするのが得意だったり、好きなタイプの人間ではありません。
ですので、うまくできるか分からないのですが、あたたかく見守っていただけたらと存じます。
*今回のオンライン会見は報道関係者様向けになっております。誰でもアクセスできるようなライブでの配信は行いません。会見の内容はメディアなどの報道にてご確認くださいますようお願い申し上げます。
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