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心理職ユニオン

なぜ裁判を闘うのか 

東京都スクールカウンセラー雇い止め裁判原告の想い


 東京都は2023年度末に、会計年度任用職員として長年働く250人ものスクールカウンセラーらを5年の雇用限度を迎えたとして、雇い止めにしました。

10年や20年以上働くベテランのスクールカウンセラーも雇い止めされ、東京都はその理由について雇用の更新限度を迎えたという形式的な説明以外に、一切明らかにしていません。

学校現場では、頼りにしていたスクールカウンセラーが突然いなくなることで混乱が生じて、子どもや親御さんにも不安が広がりました。

このような雇い止めを許し、不安定な働き方を許してしまうと、安定的なカウンセリングもできません。

そのような状況を少しでも改善するために、雇い止め撤回を求めて、10名のスクールカウンセラーが裁判することを決意しました。

会計年度任用職員という制度上、非常に難しい裁判になりますが、今回、なぜ声を上げようと考えたのか、原告らの想いを載せます。



<原告Aさん> 

 東京都スクールカウンセラーとして勤務するには、それ相応の覚悟と努力が必要だと思っています。SCはなんでも屋です。子ども、保護者、学校関係者から様々な相談やオーダーがきて、時には命にかかわるような、迅速さと慎重さが必要な相談も受けます。カウンセラーとして心のケアだけを勉強していただけでは対応できない、人間力や柔軟性が問われる仕事だと思っています。だからこそ日々の研鑽を怠らず、勤務日までに様々な準備をし、各学校週に1日しかない勤務に全力で臨んできました。多い日は1日12ケースも予約で埋まりお手洗いにも行けないほど必要としてもらった学校もありました。その10年の日々を、たった20分の面接でNOと判断されたこと、大きな失望感と虚しさを感じました。せめてなぜNOなのか教えてほしい。教えてもらえたら改善するため努力できます。そして今回の不採用で、私のことを信頼し、SCを足掛かりに学校生活を頑張って乗り切っていた子どもや保護者に不安と悲しみの涙を流させてしまったことも本当に申し訳なく、彼らの涙が今回の裁判の原告となる動機にもなっています。多様性の時代、あらゆるお子さんの健やかな育ちに対応するためにSCは大変必要な職です。そんな職を一年契約で使い捨てできると思っているのならば、改めてこの裁判を機に考え直して頂きたいのです。私の職業アイデンティティはスクールカウンセラーです。大切なこどもたちのために誇りを持って働かせてほしい。それが望みです。


原告Bさん> 

私が、裁判をしようと思ったのは、今回雇止めにあったということが一番の理由です。

さらにこれまでも心理として仕事をしていく中で、雇用条件や契約において、不愉快な思いをしたにも関わらず、一人ではどうしようもない状態で、あきらめなければならないことが幾度かあったということも関連しています。心理は一人職場ですので、通常の労働者がもつ争議権や団体交渉権など、殆ど意味をなさない状態で勤務せざるを得ません。こういう組織があればと、こころから願っていました。今回、都スクールカウンセラーに起きたことは、残念ながら、現在の心理職の状況においては、他の人々にも、これから起きうることと思います。今回の裁判は難しい結果となると思いますが、このことを通して、他の人の力を借りつつ、あきらめなければ、何とかなるかもしれないということを、わかちあうことができればと思います。


<原告Cさん> 

難しい裁判であることは承知していますので、自分の利益や地位保全のための提訴ではないと思っています。

 教育現場で心のケアの大切さが訴えられ、専門的な心理的支援が必要とされているのに、それを担う心理職が職責に敬意を払われることなく、不安定な立場におかれていることに関心をもってもらい、次世代の心理職が安心して働けるようになって欲しいと思います。

 また、不透明な採用基準、人権を無視した面接を行ってまで何のために「大量雇い止め」が実施されたのか、「管理運営事項」「応募機会の公平性」という東京都教育委員会の回答の背後にある真実を明らかにして欲しいと思っています。


<原告Dさん> 

私は24年度に東京都SCの会計年度職員の年限の上限に達し雇止めに遭いました。私

は都SC歴が26年目で、私立を含むSC経験は39年です。これまで、25回更新してきま

した。ところが、24年度採用面接では長年の研鑽や実績で東京都に貢献してきた心理

の専門家としては全く尊重されず、面接官の侮蔑的態度や言動に心が深く傷つき、人

権侵害と感じました。突拍子のない非常識で不適切な質問の執拗な繰り返しで「パワ

ハラ圧迫面接」でした。合格したSCに聞くと、私が質問された内容や試験官の侮蔑的

態度は一切なく、すんなり終わったとのことです。過去の経験・実績は不問で、この

10分~20分の面接試験のみが採用基準とのこと。解雇するなら、事前にSCに解雇理由

を説明する都教委の義務や責任があり、一方的に雇止めにするのは人道上、人権上問

題があります。1月末の不採用通知後では就職活動もままならず、収入が途絶え、多く

のSCが生活に困窮をきたしました。何よりも学校で「イジメ対策」を推進している都

教委が自らの手で、SCへの排斥・いじめ加害行為に出ること自体が大きな矛盾を感じ

ます。面接官と都教委に心からの謝罪を求めます。


<原告Eさん> 

面接時におけるバラバラな質問内容や圧迫面接の存在など、面接自体が公平公正に成されなかったにもかかわらず、団体交渉等後の都教委からの回答では、「任用審査においては勤務評定をいっさい加味せず面接だけで評価した。新規で採用を目指す人との雇用機会均等を維持するため、公平公正に実施した。」とのことで、これまでの経験や勤務校での実績に基づく管理職の評価は一切考慮されなかったという、教育に携わる行政機関の行為としては信じがたい事実が明らかになりました。

そもそも面接を受けるまでの4年8ヵ月にわたり、勤務校の校長から高い評価をいただきながら職務を遂行してきたスクールカウンセラーを、それまでの評価を完全に無視して、切り捨てた都教委の行いが公平公正と言えるのでしょうか? これは倫理的、人道的に許されない卑劣極まりない行為であると考えます。

時間をかけて関係づくりをしつつ、支援してきた多くの児童・生徒とその保護者に対し、突然終結せざるを得ない状況となり、気持ちを大きく動揺させる結果となりました。支援中であった何人かの児童の保護者たちは「困っている私たちは、東京都教育委員会から見捨てられたということなんですね。」と涙ながらに訴えていらっしゃいました。こうした児童・生徒や保護者の切実な思いを決して風化させてはならないと考えます。

今回の都教委の行いは、児童・生徒や保護者の痛みや辛さを受け止めながら支援に努めるスクールカウンセラーを含む心理職という専門性を安易に軽視し、人間の尊厳を踏みにじる行為であり、決して許すことはできず、原告として訴えることを決意しました。


<原告Fさん> 

私は産休を取得した年に雇い止めに遭った。都SCの産休取得者で雇止めにあった方が他にも複数いることを知った。現場の評判は解雇されるほど悪くない。むしろ、雇止めに疑問を抱く管理職しかいなかった。学校への貢献、現場の評価は反映されず、産休取得者が都合よく扱われたのではないか。雇い止めに遭ってみて初めて、地方や他の自治体含め、目立たないところで会計年度任用職員の雇い止めがいくつも起きていたこと、声を上げる先もなく、泣き寝入りをせざる得ない人達の存在を知った。声なき声に耳を傾けるだけでなく、泣き寝入りしている人の存在を世に届けることもまた、カウンセラーとしてのミッションではないか。東京都が大胆な雇い止めを公然と行ったことを当たり前にしてはいけない。許してしまえば、追随する自治体や民間企業が相次ぎ、日本という国から不当な雇い止めが当たり前になってしまうのではないか、ますます未来に期待できない国になってしまうのではないか。

ところ変わって立場が変わっても、法律を盾に、突然の雇い止めを言い渡される可能性があること、公共機関が公然と雇い止めを行うような事態を許してはいけない。追随する自治体が出てくること、同じ思いをする人をこれ以上増やしたくないと感じたため裁判をしようと思った。

 



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